小型底びき網漁業の先輩に聞く「それでも働く理由」


浜野裕史(ハマノヒロシ)さん
40歳 兵庫県尼崎市出身 6年目

大漁の時なんて、ホント辛い事とかどっかに吹っ飛んで行くくらい嬉しいですね!

にこやかに語ってくれた浜野さん(6年目:40歳)。
小型底びき網漁業というハードな仕事に就き、働き続けてきている経験者に、何故「漁師」を目指し、これまで続けてこれたのかを伺いました。
「漁師」という仕事に興味があり、これから目指そうという方は、是非先輩の実際の声を聞き、それから漁師への扉を叩いてみて下さい。

インタビュー内容

Q1 仕事(小型底びき網漁業)ではどのような作業をされていますか?
この漁はひとつの船に4〜6人が乗船して、すべての作業を全員でこなすのが基本ですが、網の引き上げ時には、それぞれの担当があり、私の場合は網揚げの動力の調整などが主な作業になります。
Q2 小型底びき網漁業というのは過酷な仕事というイメージがありますが、何故そんな大変な仕事に就こうと思われたのでしょう?そのきっかけも教えてください。
小さな頃から釣りが好きで、漁師という仕事に、「大好きな釣りで稼げるなんて!」とずっと憧れていたんです。前職(薬品会社)に島根出身の同僚がいて、彼から島根の海や人柄の話をずいぶん聞かせてもらい、どんどん「漁業=島根」というイメージが定着していったんです。人間関係等、前職にも限界を感じていた時だったので、それをきっかけに島根への定住登録にサインしたんです(笑)定置網漁業の求人もあったんですが、扱う魚種の多い底びき網漁の方が私にとっては魅力的でした。当初から妻には反対されていて、今も単身赴任のような状態ですが、それでも夢を追いかけて現在に至っています。
Q3 一日の半分以上を船の上で作業しなければならない底びき網漁の仕事のなかで、一番辛いことは?
やっぱり朝が早いことでしょうか。季節にもよりますが、基本的に深夜2時には起床して、港に帰ってくるのが夕方で、就寝が夜9時ぐらいと、プライベートな時間もままなりません(苦笑)しかも仕事のほとんどが力仕事で体力勝負でしょ?仕事中も休憩がとれないくらい忙しい場合も多いし、天候で一日の仕事がまったく違ってくるし、とにかく大変な事だらけです(笑)
Q4 ではこの仕事の楽しさは?
なんせ魚が好きで漁師に憧れてこの世界に入ったので、船上が足の踏み場もないくらい魚で埋め尽くされた大漁の時なんて、ホント辛い事とかどっかに吹っ飛んで行くくらい嬉しいですね!また小型船ならではのフットワークで、さまざまな漁のスポットへ自由に動き回れるのも、小型底びき網漁の面白さです。それと何百頭ものイルカの大群に囲まれたり、クジラの潮吹きを間近に見たりと、この仕事でなければ経験できないような素晴らしい場面に遭遇できたことでしょうか。
Q5 この仕事に就いて最も苦労したことは?
方言は分かるまで苦労しました。それと船酔いですね。ベテランの漁師でもまだ船酔いすることがあるくらいですから(苦笑)
Q6 今まで続けてこられた原動力は何だと思いますか?
もちろん海や釣りや魚が大好きなことが一番ですが、いずれ独立してやっていきたいという夢があるので、今がどんなに大変でも、修行だと思えるから頑張れるんだと思います。
Q7 将来の夢は?
独立することと、自給自足的な海の生活です。
Q8 底びき網漁業への就職を希望される方へ向けてアドバイスをお願いします。
自然が相手の危険を伴う厳しい仕事です。おそらく皆さんが想像している以上に大変な仕事だと思います。その辺の覚悟がないと絶対に続きません。でも来た人たちには、船長以下みんな期待するんです。だからこそ、中途半端な心構えで来られたんじゃ困るんです。そういう厳しさを理解して、それでもチャレンジしたい!という人なら、一緒に仕事していけると思いますね。